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2026 年 3 月、税理士の畠山謙人氏が X で**「コードが書けない税理士が作った、AI への『指示書』を全部見せる」**と題した記事を公開し、注目を集めている。
畠山氏はプログラミング経験ゼロ。監査法人に 5 年、上場企業の経理に 4 年、税理士として 5 年。ずっと数字と向き合ってきた。
それでも今、Claude Code が事務所を動かしている。60 社の顧問先を、スタッフ 0 人で、17 時退勤で回せている。
なぜそんなことができるのか。
答えは**「CLAUDE.md」**にある。
本稿はこの CLAUDE.md の全貌、4 つのブロック構造、そしてセキュリティ対策を詳しく解説する。
CLAUDE.md とは何か
Claude Code には**「CLAUDE.md」**というファイルがある。簡単に言うと、AI への指示書だ。
- 「あなたはこういう役割です」
- 「こういう時はこう動いてください」
- 「これだけは絶対にやらないでください」
これを書いておくと、Claude Code が毎回それを読んでから動く。毎回ゼロから説明しなくていい。
畠山氏はこの指示書を、半年かけて育ててきた。
全体構造:4 つのブロック
CLAUDE.md は、大きく 4 つのブロックでできている。
- 役割の定義
- やっていい仕事と、やってはいけない仕事
- 外部ツールとの連携マップ
- セキュリティルール
順番に見ていこう。
① 役割の定義
冒頭にこう書いてある。
「あなたは『AI 税理士事務所』の実行部隊です。 司令塔である畠山が税務判断・戦略に集中できるよう、以下を自律的に担当してください。」
そのあとに AI が担当する仕事を書いている。
- 経理
- 帳簿(freee/MF 会計の仕訳分類・登録)
- TODO 管理(タスクの洗い出し・期限管理・工程表生成)
- 顧問先対応(資料整理・提案書作成・契約書作成)
- 発信コンテンツ(X/note のネタ出し・下書き)
- 情報収集(税制改正・業界動向のキャッチアップ)
これだけ書いておけば、AI は「自分が何を期待されているか」を理解する。
ポイントは**「自律的に担当」**という言葉。いちいち「これやって」と言わなくても、AI が自分で判断して動いてくれる。
② やっていい仕事と、やってはいけない仕事
ここが一番大事かもしれない。
畠山氏の CLAUDE.md には、こう書いてある。
「税務判断は一切しない。常に『確認事項』として畠山に提示すること」
AI に全部任せているように見えるかもしれないけど、違う。税務判断は絶対に AI にさせない。
具体的にはこういうルール。
| 業務 | 担当者 |
|---|---|
| 仕訳の分類(過去パターンと一致) | AI が処理 |
| 仕訳の分類(新規・グレーゾーン) | 畠山に確認 |
| 提案書・契約書 | AI が下書き。最終チェックは畠山 |
| コンテンツ | ネタ出し・下書きまで。発信判断は畠山 |
「ここまでは AI、ここからは人間」
この線引きがないと、AI は暴走する。逆に、この線引きがあるから安心して任せられる。
③ 外部ツールとの連携マップ
畠山氏の Claude Code は、以下のツールと繋がっている。
- freee → 会計仕訳の自動登録(API 連携)
- MF 会計 → 10 社分の仕訳処理(ブラウザ自動化)
- Notion → ドキュメント管理・TODO 管理・議事録
- Google Calendar → スケジュール管理・TODO 同期
- Gmail → メール読み取り・検索
- Slack → メッセージ確認・TODO 自動登録
- Discord → クライアントとの連絡
- Google Drive → ファイル管理・Docs/Sheets 操作
全部**「MCP」**という仕組みで繋がっている。MCP の詳しい説明は省くけど、Claude Code が他のツールを直接操作できるようになる技術だ。
大事なのは、これらの連携を畠山氏が**「コードを書いて」作ったわけじゃない**ということ。「freee と繋いで」「Notion と繋いで」と Claude Code に頼んだら、AI が設定してくれた。
④ セキュリティルール
ここは正直に書く。
Claude Code を使うということは、データが Anthropic のサーバーを経由する可能性があるということ。税理士として 60 社の顧問先データを扱う以上、「AI すごい」で思考停止するわけにはいかない。
どこにリスクがあって、どう対処しているか。
① Anthropic の規約
Anthropic API は、入出力データをモデルの学習に使わない。利用規約に明記されている。通信は TLS 暗号化、SOC 2 Type II(セキュリティ監査)も取得済み。
② 顧問契約書に AI 利用条項を入れている
顧問先との契約書に、AI ツールを業務に使うこと、データが海外サーバーを経由する可能性があることへの同意条項を入れている。AI を使い始めた時点で、この条項は整備した。
③ 明細データが AI のサーバーにほとんど送られない設計
ここが一番大事。
畠山氏の freee 自動経理の仕組みはこうなっている。
freee(クラウド会計)
→ API でローカル PC にデータを取得
→ ローカル PC で処理(勘定科目の判定・仕訳の組み立て)
→ API で freee に登録
つまり、データの流れは**「freee → 僕の PC → freee」**。この流れの中で、Anthropic のサーバーを経由しない。
Claude Code に返すのは「10 件処理しました」「3 件スキップしました」というサマリー情報だけ。摘要テキスト、金額、取引先名といった明細データは、ローカルのログファイルにしか記録しない。
④ 勘定科目の判定だけ、1 件ずつ AI に聞いている
唯一の例外がある。ほとんどの取引はローカルのキーワード辞書で判定されるので、AI には送られない。辞書にない新しいパターンの時だけ、Claude Haiku API(最軽量モデル)に「この摘要は何費?」と 1 件ずつ問い合わせている。
ただし、送信前に個人名・口座番号・カード番号は自動でマスキングされる。コードの中にマスキング関数を入れていて、承認番号、口座番号、依頼人名、カード利用者名を全部「***」に置換してから送る。
AI のサーバーに届くのは**「マスキング済みの摘要と金額」だけ**。事業所名も、誰の取引かも分からない状態で送っている。
⑤ 事業所間のデータは完全に分離
A 社の処理中に B 社のデータが混ざらないよう、API アクセスは事業所 ID で完全に分離。ログファイルも事業所ごとに独立。AI の会話コンテキストにも、他社の明細は残らない設計にしている。
「AI だから危ない」と思考停止するのは簡単。でも、どこにリスクがあるかを分解して、1 つずつ対処する。そのルールを CLAUDE.md に書いている。
AI に仕事を任せるのと、AI にデータを垂れ流すのは全く違う。
CLAUDE.md の作り方
ここまで読んで「すごいけど自分には無理」と思った人へ。
最初から今の形だったわけじゃない。半年前の畠山氏の CLAUDE.md は、たった 3 行だった。
「あなたは税理士事務所のアシスタントです。」 「freee の仕訳を手伝ってください。」 「税務判断は僕に聞いてください。」
これだけ。ここからスタートした。
使っていくうちに「こういう時にこう動いてほしい」が出てくる。それを CLAUDE.md に 1 行ずつ足していく。半年でここまで育った。
ただ、正直に言うと、CLAUDE.md の「構造」は誰でも作れる。本当に難しいのは、自分の業務を AI に伝えられる言葉に変換することだ。
「仕訳を自動化したい」だけでは AI は動けない。「freee の未処理明細を取得して、摘要に"スターバックス"があったら会議費で登録して」まで分解して初めて動く。
自分の仕事を、どこまで分解できるか。どこを AI に任せて、どこを自分でやるか。
この「業務の翻訳」ができるかどうかが、AI を使いこなせるかの分かれ目だ。
日記を書くように、指示書を育てる。コードは要らない。日本語だけでいい。でも、自分の仕事を言葉にする力は要る。
まとめ
CLAUDE.md は、AI への指示書。
- 「やっていい仕事」
- 「やってはいけない仕事」
- 「繋がるツール」
- 「データの扱い方」
これを日本語で書くだけで、AI が自律的に動いてくれる。コードは 1 行も書いていない。
畠山氏の事例は、コードが書けない専門家でも、AI を活用して業務を自動化できることを示している。
重要なのは、自分の業務を分解して、AI に伝えられる言葉に変換する力だ。
参考:
引用元・参考リンク
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