Lab Research 個人向け国債の仕組み——変動金利型と固定金利型の使い分け
目次

個人向け国債は財務省が個人投資家向けに発行する国債で、元本保証・最低金利保証という特徴を持つ安全性の高い金融商品だ。銀行預金より有利な金利が得られる場合も多く、安全資産の一選択肢として有用性が高い。3種類の商品を正確に理解して金利環境に合わせて選択することが重要だ。

個人向け国債の3種類

個人向け国債には以下の3種類がある:

種類 愛称 満期 金利タイプ 金利の決まり方
変動10年 変動10年 10年 変動 基準金利 × 0.66
固定5年 固定5年 5年 固定 基準金利 − 0.05%
固定3年 固定3年 3年 固定 基準金利 − 0.03%

共通事項:

  • 最低購入金額:1万円(以後1万円単位)
  • 最低保証金利:年0.05%(どんなに市場金利が低くても0.05%が保証される)
  • 発行頻度:毎月発行(年12回)
  • 中途換金:発行後1年経過後から可能(ただし直近2回分の税引前利子相当額が差し引かれる)
  • 国が元本を保証(デフォルトリスクは理論上はあるが、実質的に最高の信用度)

変動10年の金利計算式

変動10年の特徴は金利が6ヶ月ごとに見直されることだ。

利率の計算式

利率(半年ごと設定) = 基準金利 × 0.66

基準金利: 利子計算期間の開始日の前月の最終営業日における「10年固定利付国債の流通利回り」が使われる。

計算例:

  • 10年固定国債流通利回りが1.0%のとき

  • 変動10年の利率 = 1.0% × 0.66 = 0.66%

  • 10年固定国債流通利回りが2.0%のとき

  • 変動10年の利率 = 2.0% × 0.66 = 1.32%

係数0.66は個人投資家に対する利率水準の調整値だ。市場の長期金利が上昇するほど変動10年の金利も上がる。

変動10年が有利になる局面

金利が上昇局面にある(または上昇が見込まれる)ときに変動10年が有利だ。

  • 固定金利商品を選んでいると、将来の金利上昇の恩恵を受けられない
  • 変動10年であれば6ヶ月ごとの見直しで金利上昇に追随できる

日本の金融政策が正常化の方向にある状況では、変動10年を選ぶことで「金利上昇リスクのヘッジ」ができる。

固定5年・固定3年の金利計算式

固定5年の利率

利率 = 基準金利(5年固定利付国債流通利回り) − 0.05%

5年間固定の金利が保証される。購入時点の金利水準が将来にわたって固定されるため、金利が下落した場合に有利で、金利が上昇した場合に相対的に不利になる。

固定3年の利率

利率 = 基準金利(5年固定利付国債流通利回り) − 0.03%

3年と短期のため、金利リスクが最も小さい。利率は最も低く設定されることが多いが、3年後に再購入することで金利の見直しが可能だ。

3種類の比較表(詳細)

項目 変動10年 固定5年 固定3年
満期 10年 5年 3年
金利固定期間 6ヶ月(変動) 5年 3年
最低保証金利 0.05% 0.05% 0.05%
金利上昇時 有利 不利(固定のため) 不利(固定のため)
金利低下時 不利(追随して下がる) 有利(高金利をキープ) 有利
中途換金の縛り 発行後1年 発行後1年 発行後1年
中途換金ペナルティ 直近2回分の税引前利子 直近2回分の税引前利子 直近2回分の税引前利子

金利環境別の最適な選択

金利上昇局面(金融引き締め・インフレ進行中)

変動10年が最適。

金利が上昇するほど変動10年の利率も上がる。長期間(10年)保有する予定があれば、金利上昇の恩恵を最大限受けられる。

固定金利商品を選ぶと、将来もっと高い金利で発行される国債が出てきた時に乗り換えにくい(1年の中途換金禁止期間があり、2回分の利子ペナルティも生じる)。

金利低下局面(金融緩和・デフレ懸念)

固定5年または固定3年が有利。

金利低下が見込まれるなら、現時点の金利を固定した方が得だ。ただし日本の個人向け国債の最低保証金利(0.05%)は、超低金利環境でも一定の利回りを保証する。

金利水準が不確実な場合

変動10年と固定5年を分散して保有するか、変動10年で様子を見る。

金利の方向性が不明な場合、変動10年で金利上昇の恩恵を受けつつ、一部を固定5年に置くことでリスク分散ができる。

銀行預金との比較

個人向け国債と普通預金・定期預金の比較:

比較項目 個人向け国債(変動10年) 普通預金(メガバンク) 定期預金(ネット銀行)
金利(目安) 市場金利連動(0.05%〜) 約0.1% 約0.5〜1.0%(条件次第)
元本保証 国が保証 預金保険(1,000万円まで) 預金保険(1,000万円まで)
流動性 1年後から中途換金可(ペナルティあり) いつでも引き出し可 解約ペナルティあり
金利上昇への対応 変動10年は追随 随時変更(通常は遅い) 満期更新時に反映

預金保険の限度(1,000万円まで)を超える資産を安全に保有したい場合、個人向け国債は元本保証の点で優れる選択肢だ。

購入・換金の実務

購入方法:

  • 財務省(郵便局・銀行・証券会社経由)
  • 毎月15日頃〜月末にかけて募集期間があり、その後発行される
  • ネット証券でも購入可能

利子の受取:

  • 年2回(6ヶ月ごと)に利子が支払われる
  • 税引後(20.315%が源泉徴収)で受け取り

中途換金:

  • 発行後1年経過後から換金申請可能
  • 「直近2回分の税引前利子相当額 × 0.79685」が差し引かれる
  • 元本割れは生じない(ペナルティは利子の一部の没収のみ)

まとめ

個人向け国債の3種類は、変動10年・固定5年・固定3年と異なる特性を持つ。変動10年は6ヶ月ごとに金利が見直される「基準金利×0.66」の計算式で、金利上昇局面では最も有利だ。固定5年・3年は購入時点の金利を固定するため、金利低下局面で有利になる。最低保証金利0.05%は普通預金を上回ることが多く、1,000万円超の安全資産保管にも適している。金利環境の方向性に確信がなければ変動10年を選び、金利が高い局面では固定5年で確定させるのが基本的な戦略だ。ネット証券でも簡単に購入でき、1万円から始められる手軽さも個人向け国債の大きな利点である。

免責事項 — 当記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。