Lab Research 関税インフレと景気減速は1970年代のコピーか——共通構造が示す次の一手
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「景気は悪いのに物価が上がる」という悪夢

2025年Q4のGDP成長率は前期比年率+1.4%に鈍化した。同時に関税コストの浸透でCPIは下がりきらず、3%台に高止まりしている。利下げしたいが、インフレが邪魔をする。

この構図を、市場は50年前に見た。


現在:半分だけ揃った条件

2026年2月の米国経済指標を整理すると、スタグフレーションの条件が「半分」揃っている状態だ。

  • CPI前年比: +3.4%(高止まり)
  • 実質GDP成長率(Q4年率): +1.4%(減速)
  • 失業率: 4.2%(まだ低水準)
  • FF金利: 4.25%(高水準維持)

インフレと景気減速は同時進行しているが、失業率の急上昇はまだ起きていない。完全な意味でのスタグフレーションではなく、「スタグフレーション的環境」と呼ぶのが正確だ。


過去:1973年と1979年の二段階

1970年代は二つの波で訪れた。

第一波(1973〜1975年): OPECの石油禁輸でエネルギー価格が300%急騰。CPIは+12.3%まで上昇し、GDPは-1.6%に落ち込んだ。フォード政権はインフレ対策として増税と歳出削減を選んだが、景気後退を深刻化させた。

第二波(1979〜1982年): イラン革命で原油が再急騰。CPIは+14.8%のピークを記録した。この時点でFRBのボルカー議長が「ボルカーショック」と呼ばれる急激な利上げ(FF金利20%)を断行し、高インフレを潰した。代償は10.8%の失業率と深刻な景気後退だった。


共通構造:供給ショックが政策の選択肢を奪う

1970年代と2026年に共通するのは「供給側のコストショックが同時にインフレと景気悪化を引き起こす」という構造だ。

要素 1970年代 2026年
供給ショックの原因 OPEC石油禁輸・イラン革命 米国関税(輸入品平均15%)
コスト上昇の経路 エネルギー→全品目 輸入中間財→製造業→消費財
政策ジレンマ 利上げ→景気悪化、据え置き→インフレ継続 利下げ→インフレ再燃、据え置き→景気悪化
財政対応 拡張財政(赤字容認) 拡張財政(赤字拡大中)

このジレンマが「スタグフレーション的」な状況の本質だ。 中央銀行は「どちらを先に潰すか」という選択を迫られる。


帰結:分岐を決める一点

ただし、1970年代と決定的に異なる要素が一つある。中央銀行の信認だ。

ボルカー以前のFRBはインフレ期待を制御できていなかった。労働組合が「来年も物価が上がる」と確信するから、今年のベースアップ要求が高くなり、それが実際の物価を押し上げるループが回った。

現在のFRBは2022〜2023年の大幅利上げで「インフレを潰す意志がある」という信認を市場に示した。このことが、賃金インフレのスパイラルを防ぐ防波堤になっている。

つまり、1970年代型の完全なスタグフレーションに陥るかどうかは、FRBが「インフレより景気」を優先してしまう時点まで利下げするかどうかで決まる。

関税政策の方向次第でCPIが3%台から4%台に再上昇するシナリオでは、FRBは利下げを止め、成長が犠牲になる。そのルートが1970年代に最も近い。


重要な論点

「スタグフレーション的環境」では、資産クラスごとに明確な優劣がある。

資産クラス 評価 理由
現物ゴールド 有効 インフレヘッジ + 政策不確実性のプレミアム
TIPS(インフレ連動債) 有効 実質購買力を保護
コモディティ(石油・農産物) 有効 供給ショックの直接受益
長期国債 回避 インフレ再加速時に実質損失
グロース株 慎重 割引率上昇でバリュエーション圧縮

今の局面で最も重要な判断は、「スタグフレーション的環境」が「完全なスタグフレーション」に移行するかどうかだ。その指標は一つ——2026年後半のインフレ率が再び4%を超えるかどうかだ。

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引用元・参考リンク

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